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2回目/フランスの過去世

  次にきちんとした形での催眠療法のセッションを受けたのは、セラピストは別の方で、30才の時でした。元夫との関係が上手く行かなくなっていた時です。
 
 まず見えたのは、私が小さな5歳くらいの女の子になっていました。その子の家が貧しいのは服装で分かりました。港から遠く海を眺めている場面から始まりました。
 女の子の名前はアニス、場所はフランスでした。
 次の場面では、突然感情が爆発し、哀しみの余りしゃりあげる様に泣き始めていました。
 自分でも最初は哀しみの理由も分からないのですが、セラピストが誘導していくうちに分かり始めました。丁度、母親が馬車に乗せられ何処かへ連れていかれる場面でした。
 私はもう哀しくて哀しくて仕方ありませんでした。母親は「大丈夫、すぐに戻ってくるから。」と言っているのですが、兄弟もいないので一人ぼっちになってしまうことが分かっていました。余りに泣きじゃくる為、セラピストは感情を出させてしまおうと思ったのでしょう。「言いたいことを言ってごらん。」と言われ、私は泣きながら「お母さん行かないで。置いていかないで。私を一人にしないで!」と声を張り上げていました。
 しばらく泣いて落ち着いた後、貧乏でどうしようもなく父親もいなかった為に(初め理由は分かりませんでした。)母親がお城に召使として連れていかれた事、そしてその母親は私の現世の姉だと理解しました。
 その後私は教会の孤児院に入れられ、やさしいシスター達に囲まれて過ごしました。シスターの一人は現世での叔母でした。その後母親と会うことはありませんでした。そしてそのまま私もシスターとなり、孤児達を世話する立場になりました。修道女は恋をしてはいけなかったのでしょうか、結局独身で終えたようです。可愛い子供たちには囲まれていましたが。
 ある場面で、一瞬体がこわばりました。教会の天井に吊るされている自分自身が見えたのです。その意味はすぐには分かりませんでしたが、象徴として(教会から出ることが出来ない繋がれた自分)を感じました。本当は自由に教会から出て行きたいという思いがあったようです。
 父親が居ないと思っていましたが、実は漁師で海に出ていたと最後の方に分かり、一番初めの場面は、子供の頃父親が海から帰ってくるのを待っていた姿でした。年老いた父親が死ぬ時は家に戻り世話を焼くことが出来たようで、その時間が一番家族と過ごした安らぎの時だったようです。
 最終的に私が死ぬ場面から死後何を考えたかというところまで導かれ、本当は恋心を抱いた男性に気持ちを打ち明けたかったこと、自分の子供を生みたいと思って死んでいった事を語っていました。男性はどうやら現世の兄のようでした。兄のように慕っていたようです。

 フランスの過去世考察

 このフランスの過去世では、置き去りにされる孤独感を残していました。それは取りも直さず、実際に私の現世で小さい頃から誰かが迎えに来てくれるような期待がいつもあった事に重なりました。特に小さい頃親に怒られた時、わざと何処かに隠れて迎えに来てもらうことで愛情を確認する癖がありました。また、結婚してからと言うもの、私は当時の夫が朝家を出ていく時に笑顔で見送りはするのですが、心の中は張り裂けそうなほど「私を置いていかないで!」「仕事になど行かないで一緒にいて!」と哀しくなっていました。それは、行ってしまって、しばらく続きました。自分でもおかしいな、とは思ったのです。だって、会社に行くのは当たり前。なのにどうして?私の感情は何なのだろう?と悩みました。
 また、夫が2週間海外出張で私が日本で待つという時も、自分では本当に理解出来かねる程の感情が出てきて、一度布団に入ったものの、早く家を出る彼を起こさないように洗面所に行って、しゃくりあげるように(あんな泣き方は一度しか経験ありません)大泣きをしてしまいました。この体験は最近になって別の理由が分かったので後述します。

 置いて行かれる哀しい体験が私に根強く残ってしまっていたのだと考えると、納得出来る部分がありました。フランスの過去世は、夫と上手く行かなくなってから体験したので、別れに対する恐怖もあったのかもしれません。しかし、この時何故か元夫が周りの人物として登場しなかったので、その時の大元の催眠療法の目的とは外れていましたが、それでも多分その時一番重要な過去を見る事になったのでしょう。
 私の姉とは6歳離れている事もあって、実際に今世では姉以上に世話をしてもらったと感謝しています。実家の家計が大変だった時、私の学費まで出してくれました。もしかすると、この頃の私を置いていってしまった罪悪感があるのかもしれないなと感じ、その後は負担をかけたくないと思いました。でも、私が甘える事はお互いにとっては過去に出来なかった事をやり直す意味があったのかもしれません。
 兄のように慕っていた男性は実際に兄になりましたし、現世で当時子供を心からかわいいと思う事が出来なかった私も、本当は心から子供を望んでいたのかもしれないと気づきがありました。
 沢山泣いた事で、元夫が出かけて行く時に感じた「おいて行かないで」という感情は全くその時から無くなりました。

 ヒプノセラピーセッション/幼児期

32歳の頃、離婚後、男性への不信感がぬぐえなかった事もあり、続けて数回の催眠療法を受ける機会をもちました。その頃平行して自分の癒しは学びながら進んでいましたが、男性への不信感に対しては手をつけられずにいました。そこで、ある意味自分への挑戦もあった気もしますが、男性のセラピストにお願いしました。
 そのセラピストはさすがにプロなので、お話をしている時に全く男性性を感じることなくむしろ女性性も併せ持った柔らかなタイプの方でした。それでも、私が何度も何度も男性への不信感を口にしたので、「良く男性の私を選びましたね。」と感心されました。
 
 初めの内は数回自分の現世の子供時代の問題を見て行きました。
 このセラピストの説明では実際に見たものが現実だとしてもそうでなかったとしても、癒しが起こる事が目的なので気にする必要はないということでした。
 3歳の頃、公園で遊んでいる私。
 周りを見ると、すべての物が光輝いて見えました。植物の周囲や人の周りに色が見えました。その時、私は蟻の巣をじっと見つめていました。何をしているのかと思ったら、どうやら蟻とお話をしているみたいです。木の細い枝で穴をつついたりしているので、余り友好的ではないようですが。
 その後、哀しみを感じました。小さな私は、「こんなに周りはきれいなのに誰も聞いてくれないの。」と言っています。「お母さんも話を聞いてくれないの。」と言って泣いていました。

 象徴なのか良く分かりませんが、もしかして記憶にない頃、そんな事をしていたのでしょうか?どちらにせよ、母親は自営業で忙しく、家のすぐそばの公園に一人で行っていた事はおぼろげに覚えています。
 
 もう一つは、部屋の中に居ないはずのお婆さんが椅子に座っているのが見えていて、怖がっている小さな私がいました。その頃、一人で部屋にいると、いないはずの人が現れて怖いのだと訴えていました。そこでセラピストは、その幽霊らしきものが怖くないのだというような誘導をしてくれました。
 私の記憶にない子供の頃なので、体験しながら「へえ」と思いました。
 母親も父親も側に居てくれないという感じがして、セラピストの誘導で父親と母親と和解し抱き合うという所に導かれましたが、その時はまだ私の中の抵抗は消えませんでした。
 けれどその後、不思議な事に徐々に両親との関係はほぐれて行った気がします。

ヒプノセラピーセッション/過去世その1

 その後のセッションでは、過去性に向かいました。

 父親が小さな国の王でありながら、選択を失敗した為に戦で国が滅びてしまった時代。オランダだった気がしますが、私は息子で父親を軽蔑していた時代をみました。(この内容はなぜか余り良く覚えていません。)
 一通りの人生を見た後、セラピストが過去世の書き換えを誘導してくれ、選択も失敗せず良い関係を築けたというあらすじに変えました。

 父親が今世で事業に失敗し、心の何処かで恨みを家族が持っていたかもしれないと気づき、父親を許す事で何かが変わる予感がしました。その過去世を見ただけで、不思議と父親はとても家族を守りたいと思っていたに違いないと感じることが出来たのです。その為に事業を大きくしたいと私利私欲がでてしまったとしても、もう良いじゃないと思いました。このセッションで、男性への根本的な怒りが少しずつ解放へと向かった気がします。

ヒプノセラピーセッション/過去世その2

 別の回では、またフランスのようでしたが、私の双子の弟が貧しさの為に養子に出される所からはじまりました。一生その弟の事が心配で仕方がありませんでした。現世の弟のようです。
 不思議な事に私は海外旅行は好きなのですが、理由も無くヨーロッパには余り興味がなく、特にフランスには抵抗があって、フランスが何度も出てくる事自体理解できませんでした。
 私は、その時代娼婦として過ごしていたようです。仲間には恵まれ噴水の周りで日中はおしゃべりをしています。すると、何処か別の国からきた男性が好意を持ってくれるようになったのです。港町なので、外国の人が頻繁に訪れては去って行くようです。
 その時、自分の体は汚れていて醜いと思い、彼からの申し出を受ける事など到底出来ないと考えていました。本当は連れて行って欲しいと思いながらも、断ってしまうのです。
 結局、その時代も独身でした。弟を心配しながら、何かの疫病にかかり誰も側に居ない状態で死んで行きました。やはり、本当は彼についていきたかったけれど出来なかった事を後悔していたので、書き換えを行いました。彼について行くと選んだ事で、私の中で何かが解けて行くのを感じました。

 私は、今世で男性に対して必要以上に嫌悪感を感じている事は分かっていました。レイプなどのニュースに敏感に反応してして怒っていました。ところが、実際ここで自分が娼婦をしていたと分かった時に、なあんだ、そっか、と気が楽になったのです。
 良く分かりませんが、自分を女性として認めたくない部分があったり(小さい頃男性になりたかった)、妙に自信がない部分等がここからも来ていたのかなと思えました。男性不信の裏返しは、自分の女性性をも否定していたようです。
 そのほかにも幾つかセッションを重ねて行くうちに、徐々にではありますが、気持ちが楽になっていきました。そのうち、私が本当に今欲しいものが、パートナーなのかライフワークなのか(実際両方ともだったのですが)分からなくなり、セッションを終える事になりました。私の中では、パートナーを欲しいと思い始めたので大成功でした。




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